住民有志により、音響に優れた特性を持たせたコアに最適なピアノの検討を始めました。選定委員は各ルートで情報をあつめ、また試弾を行いました。最終的には国産・海外製問わず国内に輸入されるほぼ全てのメーカー製のピアノが試弾されました。
備品としてピアノを購入する千葉市が参加する実務者会議において、一流演奏家を呼びコンサートを行うことを前提とし、コアに適するピアノの条件を報告しました。
一方で、「千葉市側はコアは公民館であり、現在導入を考えているのはアップライトである」ことが返答されました。このことで千葉県企業庁が建設し音響設計事務所による設計が行われたホールをもつコアに、公民館として管理運営を担当する千葉市側がアップライトを導入しようとするミスマッチが明確になりました。 このミスマッチ解決の一つとして、住民自ら購入資金を集めるチャリティコンサートが3回にわたり行われました。
チャリティコンサートなどを通じて住民の熱意がくみ取られ、市はアップライトから脱却しましたが、予算的には多くは望めないとのことでした。一方で、一流演奏家を招いてのコンサートを実現するためには、多目的小ホールですら備えているスタインウエイレベルの超一流メーカー製楽器が必要です。そこで、ホールサイズが小さいことも考慮し、セミコンサートグランド(セミコン:1000万円)も視野に入れた要望書を提出しました。
市側の予算額が決定されていない中、器種選定経過の公表は行っていませんでしたが、演奏性を考慮した選定を続けていました。国際的評価が高く欧米でホール納入実績が多数ある超一流メーカー製が求められますが、その中にはその楽器専用の演奏テクニックを必要とするものもあり公共ホールには不向きであることから絞られていきました。この過程で、海外超一流メーカーであるスタインウエイ、ファツィオリが、音色に優れ、初心者にも弾きやすく国際都市・幕張新都心にふさわしい楽器として残りました。
市議会議員らから中古品ではどうかという打診があり、セミコンですら予算確保はかなり難しいことが分かってきました(なお、中古品は状態のよいものの確保が難しい、問題があった場合の代替品確保が難しい、ホールでの酷使に耐えられないなどの理由から導入対象ではない)。より廉価な楽器の検討もせねばならない状況となりました。 そのような中、ファツィオリ正規代理店との交渉の末、”2回のコンサートと1回の録音で使用したフルコン新古品”なら安くしてもよいとの返答を得、これまでコアにふさわしいピアノとしてあげた条件をほぼ全て備える最有力候補となりました。
ファツィオリは欧米ではトップレベルの優秀な楽器としてよく知られますが、その個性を詳細に確かめる必要があります。そこで、コア開館時の演奏会用にレンタルを行い演奏家に意見を伺うほか、住民による試弾を行いました。同時に新古品の状態も調べました。 音色面でのホールとの相性を検討すると同時に、最大シェアを誇るスタインウエイとの比較を行い、ホールのメインピアノとして導入したときの問題の有無を検討しました。 スタインウエイの特徴: 響きの少ない大ホールを意識した音づくり−耳に残りやすい低音、高音を強調した金属的な音色、大音量。 ファツィオリの特徴: ピアノ本来の木の音を重視した、やわらかく優しく透明感のある音色。 一流ピアニストの仲道郁代やダートマス大学チェンバーシンガーズ指揮者のティム・ニュートンらは絶賛。周辺ピアニストや講師、アマチュア演奏家、ピアノ教室生徒さん達の試弾においても好印象を受けられた方がほとんどでした。 演奏家200人規模の身近なタウンホールであり、木を多用し柔らかく包まれる雰囲気のあるコアホールにおいて、ファツィオリの音色・特性はきわめてマッチしたものと言えるとの結論に達しました。 楽器の状態もきわめてよく、新品同様でありました。 以上から、ピアノ選定委員会はファツィオリ新古品を導入すべきであると最終報告しました。 これを受け、『コアのホールにコンサートピアノを入れる会』は導入する器種をファツィオリ F278新古品に決定しました。 市予算は230万円にとどまりましたが、『入れる会』はこのきわめて魅力的な楽器を導入すべく、募金活動等をはじめました。
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