2000年7月25日
ホール音響選定について
コアホール音響選定事務局
今川大介(@公園西の街)
ホールの使用目的については、さまざまな要望がでています。しかし目的別の空間確保ができない制約上、「生音重視の多目的ホール」という2面性を持った空間の実現を目指すしかありません。催し物によってはなんらかの音響的な問題が発生する可能性もある為、今回「ホール音響選定事務局」を発足し、いかにこの空間を効率良く、高品質なものにできるか検討を実施し、設計者の方々への要望書としてまとめました。
1 残響時間について
目標残響時間1.2秒(満席時、500Hz)については、音について唯一数値化されたものであった為、さまざまな意見がでた。良否については趣味、思考も含まれた感覚的、想定的な評価となる為、当然のことながら賛否両論である。現状として目的別に複数のスペース(アコースティック音楽専用、ポピュラー音楽専用、講演会専用、演劇専用等)を用意できない都合上、残響可変は必要不可欠である。部屋の大きさ、及び使用用途から考えれば、1.2秒という数値が可もなく不可もなくというところでしょう。基本設計にも含まれていた幕(タペストリ)を壁にかけて残響可変を行う方法も含めて、残響可変について更なる検討をお願いします。また残響と同じく音質についても合わせて検討願います。
1) 静かな空間であるか?
2) 言葉は明瞭に聞き取れるか?
3) 音楽が豊かに響くか?
4) ホール客席エリアに均一な音量、音質か?
5) フラッターエコーがないか?
2 残響可変案
残響時間 |
短(〜1.0) |
中(1.1〜1.3) |
長(1.4〜) |
1案 |
幕により対応 |
幕により対応 |
何もしない状態 |
2案 |
何もしない状態 |
電気音響残響付加 |
電気音響残響付加 |
3案 |
幕により対応 |
何もしない状態 |
電気音響残響付加 |
3 残響可変3案に対する問題点
1案:幕(タペストリ)の配置により上記までの残響削除が可能か?
2案:電気音響残響付加(支援)装置の音質、効果の良否、及び操作、調整は容易か?
4 会議室(隣室)の改善案
また上記3段階(「短」「中」「長」)の残響可変が困難な場合は、ホールにおいての残響可変範囲は「中」、「長」とし、「短」の環境については隣室である「会議室」につくることが可能か検討をお願いします。その理由としてこれだけパソコンを応用的に利用している地域である為、パソコン/プロジェクタを使用した会議が想定されます。「ホール」、「会議室」双方にAVシステム環境を整備するのも非効率であり、また「ホール」のスペースで十分な効果(臨場感)を得られるAVシステム環境となると大規模(スクリーンサイズ、プロジェクタの規模等)なグレードのシステムになってしまいます。費用的な問題も踏まえて「会議室」を1つの多目的スペース(AVホール)として、規模相応のAVシステム環境をつくってはどうでしょうか。5・1サラウンドの導入及びポピュラー音楽の練習やミニコンサート、カラオケ大会等の電気音響を使用するイベントの際に、音の明瞭性を重視したスペースとして検討していただきたい。その場合、防音やスクリーン/プロジェクタ設置に伴う天井高の確保、サブウーハ収納等、新たな問題も発生するでしょうが、スペースの効率化と音環境向上の為、是非検討をお願いします。
5 電気音響設備について
A:スピーカ、パワーアンプ
ホールに常設(建築物に取付ける)するスピーカ(プロセニアム、サイド、固定はね返り等)については音声の明瞭性を重視したものを選定したい。ただしポピュラー音楽等に適したスピーカとして、各種イベント(ベイタウン祭等)や屋外ステージでの使用も考慮した移動型スピーカが必要です。スピーカの種類としてはキャスタ付メインスピーカ(ハイボックス×2/ローボックス×1)×2、フットモニタ×2、スタンド型スピーカ×2です。スピーカケーブルの長さ、本数の検討も必要です。プロセニアムスピーカを設置する場合は意匠的な問題もあるかと思いますが、ぶどう棚のないホールの為、メンテナンスの容易な電動吊下可能な露出型でお願いします。音響的観点からも無理に埋込より良いと思います。
パワーアンプについては上記スピーカに応じた数量が必要となります。
B:音源、ミキサ、その他周辺機器
音源、再生装置については現状考えられるメディアに対応できるものとする。カセットデッキ、MDについては録音での使用を考慮し各×2、CDは×1、が必要です。
ミキサについてはポピュラー音楽のコンサート、また音楽イベントの記録を考慮し、最低でも16入力、8出力(マトリクス出力)の入出力数を確保したものが必要です。
周辺機器についてはスピーカ、音場調整用のデジタルプロセッサ、イコライザ、エフェクタ(リバーブ機能)、ハウリングサプレッサ、コンプ/リミッタまでは装備していただきたい。
上記機器の内、デジタルプロセッサを除く機器については、屋外イベント、会議室での使用も考慮し移動型の対応(キャスター取付)をお願いします。接続ケーブルも同様です。
C:マイクロホン類
ワイヤレスマイクについてはハンド型×4、タイピン型×2でお願いします。
その他各種有線マイクについては小編成のアコースティック音楽の録音、ポピュラー音楽の録音、PA(SR)も考慮したマイクの種類及び本数を選定していく必要があります。また、マイクスタンド、音声ケーブル類についても同様です。
マイク、ケーブル等の備品類の整理、収納も検討願います。
録音に必要とされる吊マイクについては必要であるが、「電動プリセット型」等の高性能なものは必要ないです。
D:電源
ノイズ対策の為、電源系統については音響専用の回路でお願いします。接地アースについてもノイズ考慮願います。
E:配線、コンセント盤
各種イベントを想定した上で、各所へのスピーカ、音声回線の配線、及びコンセント盤の設置をお願いします。ホール内各所、会議室各所、屋外ステージ各所が共通した電気音響設備の使用個所です。
6 調整室について
以前、「音響調整及び調光用の専用スペースの確保はできない」との見解がありましたが、平面図のV2、U2通りの2階部分の空間をU1通りまで拡張し調整室用のスペースが確保できないか検討願います。
7 AV(映像)設備について
上記「C 会議室(隣室)の改善案」採用の是非によりスクリーン、プロジェクタのグレード規模は変更されるでしょうが、PC対応(RGB入力付)で調整が容易な液晶プロジェクタ(高輝度)をお願いします。
B:録画、再生機器
現状想定できる主なメディアが必要になります。DVD、S−VHS、8mm、DVが各×1です。、また常設のテレビカメラ(場内全域撮影用)等があれば場内監視及び記録用として利用できるでしょう。
8 発注形態について
千葉県、千葉市、の各担当者の方々、また高谷先生にとってどれほどの業務負担につながるかわかりませんが、発注金額、発注規模による問題(規定、規則)がないのであれば、この種の専門性を要し高い品質確保が必要な設備工事については、建築(電気)一括発注ではなく、専門工事業者への分離発注が望ましいのではないかと考えます。備品についても同様です。
9 その他
・舞台照明について何か具体案があれば教えてください。
・トイレの便器数がホールの収容人数に対して少ないと思われます。
- 楽屋として使用するスペースは恐らく、会議室、和室との兼用かと思われますが、出演者への配慮として三面鏡、ハンガーラック等の備品を装備していただきたい。