コミュニティ・コア ホール ピアノ選定委員会(準備会)

第一回委員会報告

2000/7/25

 コミュニティ・コアのホールは優れた音響を持ち、他の大ホールとは異なるターゲットを持つ小ホールとして企画されており、設置されるピアノはそれに充分に見合うレベルのものが望まれる。

 今回の参加者は別紙の委員5名。他、街外の調律師、ピアニストらにも事前に意見をきいている。

◆ コアのピアノに求めるもの  ◆

 今回のホールがごく一般的な500〜1000人規模の何処にでもあるホールであるのならば、一般的に使われるSteinway&sonsやYAMAHAのような無難なピアノを入れるという選択がなされるだろう。また、単なる公民館の講堂であるなら、安い国産ピアノの方が高温多湿には強く手間はかからないかも知れない。

 しかし、コアのホールは他には少ない、200人規模かつ生音重視の小ホールである。小規模のメリットを活かし、どっちつかずのホールとなることがないよう、コンセプトを明確にすることはホールの運営上必然と言える。

 その中で、ピアノも他にはない、明確な色を持ったものが好ましいと考える。国内で数少ないピアノだからこそあえて弾きたいというニーズもある。

 また、ともすれば画一的になりがちな国内に於いて、多様な音楽文化を花開かせる、楽器の面からのアプローチでもある。

◆ サイズ  ◆

 ホール用には大型グランドピアノ、会議室用に小型グランドまたはアップライトピアノを1台ずつ。 

    ● ホール用大型グランド ●
     ホール用には奥行き2.8m前後のフルコンサートグランド(フルコン)が望ましい。それは次の理由による。
    1.フルコンは各メーカーの最高峰のピアノであり、もっとも力を入れて開発をしている。国産では特にその傾向が顕著。
    2.低音と高音のバランスが小型グランドとは異なり、演奏者が慣れているのはあくまでフルコンである。
    3.一般的にコンサートホールにはフルコンを入れる。演奏者はフルコン指向の人が多く、音のバランスをつかむため、自宅にフルコンを置いている人もいる。
    4.調律師によると一般向けのピアノとは音質的にも材料の選定でも別の次元であり、レーベル主催者などによると、音の密度の高さから、レコーディングには通常フルコンしか使わないとのこと。
     なお、大は小を兼ねるものの、音量的には200人規模にはオーバースペックという意見もある。輸入ピアノであるならばセミコンクラスという選択肢もある。
     国産ではフルコンとそれ以外での差が大きいという傾向はきわめて顕著。一般モデルのみならず、上級者モデルでも経年劣化が激しく、楽器としての質など検討の余地がある。国産にはこのクラス(ヤマハS6,C7、カワイRX−A,RX−7など)で質のよいものがなく、検討しにくい。
     各社とも音の特徴が異なり、経験豊富なピアニストらの意見を集約する必要がある。器種選定には今しばらくの話し合いを必要とする。
    ・各社フルコンのプライス 
     
    1500万円前後 スタインウエイ(ドイツ)
    ベーゼンドルファー(オーストリア) 
    ベヒシュタイン(ドイツ)  (以上、三大名器)
    ファツィオリ(イタリア) 
    1000万円前後 ヤマハ カワイ(国産)
    900万円前後 ブリュートナー(ドイツ) 
    800万円前後 ディアパソン(国産)
    700万円前後 ペトロフ(チェコ) 
     並行輸入を使えばスタインウエイなど1500万円クラスは1000万円+α程度(ホール納入実績多数の業者による見積)。
    ・各社セミコンのプライス 
     
    1000万円前後 スタインウエイ(ドイツ)
    ベーゼンドルファー(オーストリア) 
    ベヒシュタイン(ドイツ)  (以上、三大名器)
    ファツィオリ(イタリア) 
    700万円前後 ブリュートナー(ドイツ)
    600万円前後 ペトロフ(チェコ) 
    ● 小型グランドまたはアップライト ●
     会議室では練習用等にピアノを必要とする。木目のピアノなど、調度品としての趣をもったものも選択肢に入れてよいだろう。
     国産アップライトで45〜60万円程度だが、大量生産品のため、材料に問題があり楽器としての質はあまりよくない。木材の質が高く、内部のアクションというメカ部分のしっかりした輸入物ではペトロフ100万円程度〜スタインウエイ300万円。 
     小型グランドでは国産の100万円(150cm)〜(ただし質は悪い)、ペトロフの300万円程度(158cm)〜、ザウターの400万円程度(160cm)〜、ブリュートナーの480万円(150cm)〜、スタンウエイの610万円(155cm)〜。 
◆ その他  ◆

 サロン、小ホールに入れる楽器は最低でも奥行き2.1m以上あり、セミコンで2.3m,フルコンでは2.8mに及ぶ。またピアノは温度・湿度管理が必要なため、控室や舞台のサイズ、空調やピアノ庫の必要性、等ホール設計側へフィードバックする必要がある。 

−選定委員(準備会)−

安藤 歩 (パティオス3番街 ピアニスト 聖徳大学 東京工学院専門学校 東京ミューズアカデミー講師) 
佐藤 柳 (パティオス16番街 コーラスグループ「瀬音」)  
柴崎 隆 (パティオス17番街 ベイタウン中年バンド) 
隅山 雄介(グランパティオス公園西の街 頌栄女子学院講師)
下川 正晴(パティオス5番街 コミュニティ・コア研究会) 

資料1:

千葉県内の主なホールのピアノ(アンダーラインはフルコン、斜体はセミコン、?は器種不明)
ホール名 Steinway Bosendorfer Bechstein Fazioli YAMAHA KAWAI
君津市民文化センター         CF  
木更津市民文化会館         CFIII CF
C7
 
八千代市民会館          
さわやか千葉県民プラザ   290       RX-A
白井町文化会館 D274 225      
千葉市文化センター D274       CF  
千葉県南総文化ホール D274        
           
千葉県東総文化会館 D274 290      
館山市民センター D274          
成東町文化会館 D274
茂原市東部台文化会館 D274
浦安市文化会館 D274
市川市文化会館 D274
松戸市文化センター D274
千葉市若葉文化ホール D274
印西町文化ホール D274
佐倉市民音楽ホール D274
ぱるるCHIBA D274
青葉の森公園芸術文化ホール D274

 成東町文化会館以下はSteinway正規特約店松尾楽器商会資料による。

資料2:

 各社のピアノの特徴
Steinway

(西)ドイツ

 最大シェア。大音量、金属的なきらびやかな高音が特徴。ピアニストにもっとも好まれる。誰でもいい音が出せる。残響の少ないホール向き。比較的オールラウンドに使えるため、1台しか入れられないところではSteinwayを入れるケースが多い。国内にはHumberg製がほとんどだが、NewYork製もある。
Bosendorfer

オーストリア

 柔らかい音色。フルコン・セミコンは重厚な低音を特徴とする。大音量。高音が比較的弱く、レガート奏法など、多少のテクニックを要する。輸入ピアノではSteinwayに次いで多いが決して多いとは言えない。音色や相性のよい分野が異なるため、音楽ホールではSteinwayとBosendorferの両方を入れて使い分けているところが多い。
Bechstein

(西)ドイツ

 かつては国内でもホールに多く納入されていた。低音に対して高音が弱い。金属的な粒立ちのよい音色だが奏者のあらがでやすいため、高度のテクニックが必要。残響の多いホール向き。国内にフルコンは非常に少ない。去年デビューした新型フルコンD型はSteinway的な特徴を多く持つものになった。D型は世界的にもまだ数少ない。
Fazioli

イタリア

 新興のイタリアメーカー。Steinwayのようにきらびやか、かつ軽やかなきわめて現代的な音色。ドイツともフランスとも異なるイタリア的音色が特徴。Steinwayと同じ弾き方ではよい音は出ないともいわれる。国内ではフルコンは滋賀のホールに1台あるのみ。
Bluthner

(東)ドイツ

 木質的な暖かみのある音色。戦前は Bechsteinと並び称せられ、多く見られたピアノ。ビートルズのレット・イット・ビーでも使われている。東側時代の材料ストックでつくっているため比較的安価。
Petrof

チェコ

 東欧の名器。柔らかく暖かみのある音色。クラッシックのピアニストだけでなくジャズプレイヤーにも賞賛された。世界最高ともいわれる材料の質の高さの一方、価格が安く近年注目度が高い。

他にはグロトリアン(ドイツ)、シンメル(ドイツ)、ボールドウィン(アメリカ)など。