■市のマニフェスト   

 熊谷千葉市市長の二期目のマニフェスト(H25年度)において、公民館に関して次の内容が盛り込まれた。

96万人みんなが主役の千葉市づくり
1 情報公開と市民参加のまちづくり
8 地域の課題解決を行う取り組みの発展形として、地域で公民館を運営・管理することができる制度設計を行い、より地域に密着した、地域づくりの拠点としての公民館の実現を図る。

 取り組み事業:公民館の新たな管理運営
 取り組み項目:地域による管理運営
https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/sogoseisaku/kikaku/manifesto2.html

 この時点では、公民館を指定管理者制度で千葉市教育振興財団へ管理委託する一方で、地域住民への管理委託を行う方向で検討されていた。
 市は2つの地区を対象に協議を始めたが、打瀬は当初対象ではなかった。打瀬の市議会議員から市長へ打診を行い、打瀬も検討対象となった。
 打瀬では、市側の要請を受け、これまでコアの設立に関わった住民の有志が市と打ち合わせをはじめている。しかし、市は求められた具体的な管理内容の提示をすることなく、打ち合わせも2回にとどまった。

■工程表とその変更   

 H25年マニフェストの工程表は次の通り。

公民館の新たな管理運営 H25 H26  H27  H28 
地域団体と協議を行い、体制の整ったところについて、平成28年度より、地域による公民館の管理運営を実施します。

【4年後に目指す成果・目標】
地域による公民館の管理運営の実施
地域団体へのヒアリングの実施 管理運営候補者及び公民館の選定管理運営基準の提示 事業計画書の作成管理運営者及び地域管理を行う公民館の決定 地域による管理運営の実施


 H26年度に入り、市は委託契約対象として法人格を必要するとし、幕張ベイタウン協議会が市との話し合いに参加することとなった。
 市の方針はH26年度から大きく変更され、施設全体の管理委託するのではなく、講座企画運営と窓口業務(非常勤職員を住民に変更)に限定した上、子どもの居場所・多世代交流拠点の運営というあらたな公民館の役割として求められている課題の解決を含むものへと変化した。さらに窓口業務だけでなく主事業務を委託するものとし、窓口職員ではなく主事を住民から出すものに変更された。
 これにともない、工程表も変更された。

公民館の新たな管理運営 H25 H26  H27  H28 
【工程表からの変更点】 ・ハード・ソフト両面にわたる公民館の管理運営全体について地域に取り組んでもらう予定であったが、各地域団体と調整の結果、主にソフト面について参画してもらうことになったため、「管理運営基準の提示」を「管理運営条件の協議」に、「事業 計画書の作成」「管理運営者及び地域管理を行う公民館の決定」を「管理運営者,地域管理を行う公民館及び管理運営条件の決定」に変更する。 地域団体へのヒアリングの実施 管理運営候補者及び公民館の選定
管理運営条件の協議
管理運営者、地域管理を行う公民館及び管理運営条件の決定 地域による管理運営の実施

 市は提案を変化させながら提示してくるものの、住民側が求める資料の提示をしたり、意見を反映させることはなく、一方的な姿勢が目立った。
 なお、当地区では当初のマニフェスト通り設備の管理を含んだ公民館運営全体の管理委託を希望していたが、上記のように大きく限定されたものとなっており、予算規模も大幅に減少している。

■市から公表された提案内容   

 地域への依託内容はH27/3/15時点で住民へ公開されたものでは、次のものとなっている。

 公民館の運営に地域の意向をより一層反映するとともに、地域で活動する諸団体の横断的な交流による「総合的な地域づくり」の推進に取り組む

・主事業務相当の委託
 内訳:講座企画運営、窓口業務、来館者対応 他主事諸業務
・子どもの居場所・多世代交流拠点の運営(内容は未定)
・主事1名相当分の勤務(1名〜複数名) 週5日8時間勤務程度

 当初示された予算200万円、業務内容を窓口業務から主事業務相当へ変更することで300万円という概算上限が示されているが、詳細は未定のままである(H27.5.30現在)。
 この委託額には、人件費や講座の運営費などを含むとされている。

 この内容でH27/3/15に地域住民対象の説明会が行われ、地域住民が知る機会となったが、説明会開催を伝えてきた地元ミニコミ誌でもその内容は概要のみしか伝えられておらず、本HPがはじめて公開する。
 所轄課である生涯学習振興課は、主事業務の詳細を分かりやすくしたものを説明会で明らかにするとしていたが、出席した協議会のメンバーによると、資料に※2として箇条書きに書かれたものが全て主事業務として依頼する項目ではなく3つだと言うが、市は以前に主事業務全般を依頼するとし、それを説明会で分かりやすく資料に載せるしていたことを考えると、少なくとも3つと言うことは考えがたい。また、内容を見ればいずれも主事業務であり、シフトによって週2日館長不在のときがあることを考え合わせると、住民が雇用したものが最高責任者として現場での対応を求められる場面があることは容易に想像できる。子どもの使いのつもりで対応できるものではない。ましてや『館長同格』での委託へ切り替えられることも検討されている状況にある(これは単に労働者派遣法の脱法目的であれば書類上のことであるが)。

公民館運営における地域参画について H27年3月15日公開版(PDF)

市の提案の問題点


■業務開始までの行程と諸問題  

 市では右のような行程で住民参画への道筋を考えているという。

 3/15に説明会が行われ、おおよそ半年の期間で提案内容が実現可能かどうかを検討し、可能となれば地域諸団体の了承を得た後市へ受諾の返答を行うことになる。返答を行えばあとは勤務者の選定、事務管理体制の構築、地域委員会の設立準備などを行い、準備ができ次第研修を始めることになる。

 しかし、あと2〜3ヶ月を残すのみとなっている6/4現在、提案を受ける前提となっているものの、提案自体の検討は行われておらず、業務体制の構築など影も形もない状態である。

 千葉市では、今回の提案が市の施設への勤務(労働者派遣)を求めており労働者派遣法違反・職業安定法違反(偽装請負)に当たるとの指摘を受け千葉労働局と協議し、指揮命令下にはない形になる館長同格として委託することで検討しているという。
 しかし、市が雇用する館長がおり、実務は住民側が派遣する者と市が雇用する職員の協議をしなければ成り立たないため、実態として偽装請負になる可能性が指摘されている。

 行政のNPO法人への業務委託ではボランティアが前提となることが多いが、今回の提案では勤務を必須とし、極めて労働性が高いため、法律上ボランティアとして行うことは困難である(通常NPO法人への業務委託では、文字通り委託した業務の完遂を求めるだけで市の施設で勤務を要求することはない)。最低賃金法、労働基準法、派遣法に抵触する可能性が高いだけでなく、自由意思が前提であり拘束できないボランティアによって定時勤務をこなすことは業務を確実にこなすためにも現実的ではない。
 住民が他の住民を最低賃金未満で勤務に送り込むようなことがあれば、奉仕的精神とはほど遠い強制労働になってしまう。

■想定されるコスト   

 公民館勤務(1日8時間週5日52週)と雇用する一般社団法人の事務担当者(1日8時間週5日52週)をそれぞれほぼ最低賃金(800円)で雇用したとしても、概算で326万円となる。講座企画運営予算が市直営では15〜20万円程度であるので、これを加えても、最低でも341〜346万円がなければ立ちゆかない。市の提案では上限で300万円であり、必要な人件費をまかなうことができない。
 これはあくまで最低賃金法上をクリアするのに必要なコストであり、主事業務の責任を最低賃金でまかなえるのか、人事管理や会計,派遣管理等諸事務をこなせるそれだけの適材を安価に雇用できるのかどうかは無視している。また、交替制勤務における申し送り事項の伝達等の打ち合わせ時間や住民側会議への参加時間は考慮していない。

 一日8時間、週5日勤務は拘束性・労働性が高くボランティアでは困難で、法人事務も同様である。
 法人は人事や会計事務以外に勤務中の問題に対応する体制を持っている必要があると思われる。これを住民関係者がボランティアで対応するしくみを作っておけば事務コストは削減できるかも可能性がある。しかし、日中いつでも動ける人間を確保して、連絡が取れ責任を持って対応できる体制を作ることは難しい。

 協議会内だけで体制を作るのは困難で、「考える会」側にも負担を求めることになる可能性があるが、協議会に丸投げをしている「考える会」側がどのように負担を受け入れるかも重要であろう。なにより日中の業務でありボランティアで対応できる人間が限られる。即時対応能力確保が可能かどうか検討しなければならない。
 契約を行うのは法人であり、問題が起これば第一には法人が責任を負うことになる。おそらくもっとも問題になるのは勤務シフトを埋められない事態が生じることと、雇用した者が主事業務をこなせず業務に支障が生じる事態であろう。派遣側責任を果たすための勤務の穴を埋めるバックアップ体制の構築も必要になるだろう。

■提案に見られる論理と過程   

 提案は、もともと指定管理者制度で全ての管理を委託するものからはじまっている。
 しかし、議会での質疑でも見られたように、住民組織に業者並みの管理能力や責任を求めることができるのかどうかが問題とされたようだ。市の側にもそれを見極める能力や指導能力があるとも言えない。

 そもそも現場の状況すら把握できていない所轄課にとっては、住民を運営に参加させるということ自体が極めて重荷である。

 しかし、マニフェストを進めていかねばならず、運営とは言わないまでも、何らかの形で住民を公民館の運用にとり込む案を作る必要はある。
 一方で、コミュニティセンターとの統合も検討されている中、公民館の稼働率向上は課の死活問題にもなっている。

 そこで、住民ニーズを捉えられているとは言いがたく参加者も減り、マンネリ化している講座企画運営を住民に委託する案を考えたようだ。
 しかし、予算を減らす方向が求められている中で増やすことはできず、委託費を出すことができないので、窓口業務を委託し、その人件費に講座委託費と運営経費を含めるという案に変更した。
 同時に、「地域の交流拠点・子どもの見守り」という新しい機能も盛り込んできた。
 しかし、わずか200万円で全てを委託するのは最低賃金にも満たず問題がある。そこで嘱託主事を外してその人件費分300万円分を充てることを考えた。当然業務内容は主事業務全般に広がる。
 責任が増し業務が増えるため、見かけの額が増えるだけだが、「委託費」が大きくなれば住民側がやりやすくなると言うことだったのかも知れない。

 この内容でフィックスし、H26年度末に公開にこぎ着けたらしい。相変わらず業務内容の詳細を示すこともない、かなりアバウトな案のままである。ここまでで3地域のうち2地域が脱落している。
 課としての提案をマニフェストの工程表に沿ってやって来た以上、あとは住民側が受けるかどうかでしかなく、受けるというのなら詳細を詰めればいいという程度のもので、最初から本気で委託するつもりで仕様書を作るということは全くやっていなかった。法律的にも問題があるかどうかのチェックすらやっていなかった。

 ところがこの提案が労働者派遣法、労働基準法に触れることが発覚。労働局の指導で「指揮命令下にない」形を取ろうと
・館長と同格
・単独で処理可能な内容に限定
で納めようとしたが、どうやっても「館長、主事、窓口非常勤職員のシフト制で館長不在の日もある」状況では独立した業務にはなり得ない。
 そこで、直接雇用にするか、雇用のない形にするか、という根本的なところでの提案修正を余儀なくされている。
 直接雇用→講座企画運営委託費を出せない。
 講座企画運営のみ→講座企画運営委託費を出せない。

 どちらにしても住民にボランティアを求めるものにしかならない可能性がある。
 そもそも、講座企画運営では「地域で公民館を運営・管理することができる制度設計を行い、より地域に密着した、地域づくりの拠点としての公民館の実現を図る」というマニフェストから離れすぎる。
 職員の服務規定に照らして直接雇用で「地域での運営」というのもどこまで可能かという問題もある。

 課としては、提案自体を取り下げることは困難なので、内容を変更して再提案をしてくる可能性がある。
 しかし、住民が受けにくい内容で住民に自主的に降りてもらう方向で再提案してきても不思議はない。もともと課としてはこれまでの取り組みを見ても細部を詰めておらず本気でやってきたようには見えない。「提案をしたが住民が受けなかった」と言うことでもマニフェストの遂行上は何も問題がないのである。
 課の落ち度でマニフェストが遂行できなかったと言うことになれば大問題である。これだけは避けてくるだろう。

(以上、執筆は2015/6/4)


■その後の市の対応(2015/11/27)   


 労働関連法に抵触する市の提案は、修正を試み、予算などの具体的な諸条件の提示を行うとのことであったが、市側が住民側の回答期限の目安としていた9月を過ぎても具体的な回答がなく、11/28現在に至っている。

 自治体は、直接雇用や民間委託では不可能な低予算で市民団体(NPO法人など)に業務委託し、成果のみを受け取る合法的なやり方に慣れ親しんでいる。
 同様な方法で勤務を委託することができると担当課が思い込んでの提案であったので、労働関連法に触れことに気付いていなかった。解決しようとすれば一人の嘱託職員の人件費内で納める大前提が成り立つはずもなく、どのように誤魔化しても違法性がある。根本的に提案を見直さない限り合法的な提案ができない。
 マニフェストは市長の任期4年で実現するものであるため、予算請求や人事の変更のためには、H28導入にはもはや時間切れである。
 このため事実上提案を撤回した状態になっている。

 また、H28年度には公民館の管理を千葉市教育振興財団という公民館管理実績のない組織に管理委託する方向で計画が進められてきたが、H26年度にはそれを覆す方向になっていた。この調整がついておらず住民参画案の再検討に時間を割けないこと理由に挙げているらしい。


New!
■H28年2月現在のマニフェスト進捗状況と住民側の状況(2016/6/20)

公民館の新たな
管理運営
H25 H26  H27  H28 
【工程表からの変更点】 ・ハード・ソフト両面にわたる公民館の管理運営全体について地域に取り組んでも らう予定であったが、各地域団体と調整の結果、主にソフト面について参画しても らうことになった。平成28年度はその第一段階として、地域により一部の公民館事 業の企画・実施を担ってもらう予定。 地域団体へのヒアリングの実施 管理運営候補者及び公民館の選定
管理運営条件の協議
管理運営者、地域管理を行う公民館及び管理運営条件の決定 地域による一部の公民館事業の企画・実施


 生涯学習振興課は住民に勤務を求めるが労働関連法規に違反する提案を行い、それが明らかになると【館長同格としての勤務】など脱法を試みるが結局提案を修正しないままとなり、事実上提案を取り下げた。
 しかし、生涯学習振興課はあたかも地域との交渉の結果勤務がなくなり講座の運営からはじめるかのような報告を行っている。また、今後住民が公民館の管理運営にステップアップするかのような書き様であるが、H29年度からの市長の任期で「公民館の新たな管理運営」という、生涯学習部では誰も前向きであるように見えなかった計画が継続されるかどうかも極めてあやしい。

 なお、H28年度からは住民企画の公民館講座が開かれ、打瀬で1講座、緑が丘公民館で4講座が予定されている。
 不思議なことに、『考える会』が提案するとしていた5講座はいずれも開催予定にない。
 事実と異なる広報をし、公民館利用者から全く支持のなかった、ごく一部の住民による『考える会』が昨年秋に事実上活動を停止していた様子であることを考えると、同関係者講座企画への意欲を失ったものと見られる。実態として当初から最後まで講座企画を推進していたのは『呼びかけ人』のみであり、同人が意欲を失った可能性がある。

 公民館側に確認した範囲では講座予算はゼロであるとのことである。 【考える会呼びかけ人】はベイタウンニュースなどを通じて繰り返し「ボランティア講師に講座を運営させることで千葉市からの委託費を自由に使える資金にする」ことを表明していた。委託費ゼロでは前提が根本から崩れることになる。このことで事実上「考える会」は講座運営を大幅に縮小したようだ。なお、H28年度に行われる唯一の講座(シニア体操)は提案予定だった5講座のいずれでもなく、その一つ「ラジオ体操講座」の変形なのかもしれないが、「考える会」関係者が講師をするのではなく、もともと地域でボランティアを行っていた人物によるものである。

 市長マニフェストはH28年度で終了する。次の市長の任期に現市長が続投すれば同様のマニフェストが作られるだろうが、生涯学習部がマニフェストの精神を根本から否定した経緯を見る限り

 地域の課題解決を行う取り組みの発展形として、地域で公民館を運営・管理することができる制度設計を行い、より地域に密着した、地域づくりの拠点としての公民館の実現を図る。

 取り組み事業:公民館の新たな管理運営
 取り組み項目:地域による管理運営


という項目が再び含まれるとは考えにくい。

 「地域への公民館施設の運営・管理委託」は市長のマニフェスト以前から市議会でも何度か取り上げられているが、結局は生涯学習部の人事異動で方針が大きく転換し、教育振興財団への管理委託と共に白紙にされてしまった。
 独立性の高い教育委員会故、市長の意志の影響が及びにくいことが、他のマニフェスト項目に比べ実現しにくい理由と言える。
 以前からの議論の流れもあり、当初は地域への運営・管理委託が実現する可能性は高そうに思われたが現実は全くそうではなかった。
 これまでを振り返っておこう。

H25年度 マニフェストに従い、施設運営・管理の委託を行う前提で、住民との意見交換を行った。
H26年度 生涯学習部が大きく方針転換を行い、施設の運営・管理を住民(及び教育振興財団)に渡さないことになった。地域団体に講座運営の委託を行い、住民に窓口担当の勤務をさせ、その給与も含め包括委託を行う提案をしてきた。最低賃金に満たず、とても事業として成り立たないこと、その具体的業務内容も示されていないことなどから、予算根拠や業務詳細を示すことなどを求めたが全く無視された。課は内容を小変更しつつ曖昧で非現実な提案を一方的に示し続けた。
H27年度 市と契約を行う立場にあるベイタウン協議会は「市の提案は非現実的で、指定管理者制度による管理がなくなったことで協議会の目的をなすことができないため提案を受け入れない」としていたが、地域人材を自分たちの思うように扱い自由な財源を作ることができると思い込んでいるごく一部の住民が「考える会」を立ち上げ、提案を受け入れるとの表明がなされた。しかし「考える会」およびベイタウン協議会は講座の内容をおおざっぱに検討しただけで、勤務人材確保や予算、運営体制を一切検討することはなかった。
(考える会に参加していた協議会メンバーは「協議会が市との交渉や運営体制の構築、運営開始後の講座運営を除く実際の実務を行う」と表明していたが、協議会会長は「あくまで傍観者としての参加」としており、協議会の一部のメンバーが「考える会呼びかけ人」に同調して勝手に話を進める状態にあったらしい。)
 一方、市は違法な提案を修正した新提案を示すことなく、事実上提案を取り下げた。
H28年度 市の提案による住民勤務はなくなったため予算はつかないまま、無償で住民企画の講座が行われるだけになった。「考える会」が検討していた5講座のいずれも実現せず(そのうちひとつは講師が時間的に都合がつかないから実現しなかったとのことだが、検討段階でその調整すらしていなかったのか?)、異なる内容の一講座のみ行われることとなった。協議会としては指定管理者制度による住民管理がなくなった時点での結論の通り、コアの運営からは撤退した模様である。



 開館当初の打瀬公民館では、住民企画の講座運営(公民館との共催)がなされていた
 H26年度時点で「考える会呼びかけ人」は施設管理・運営はさておいて講座運営に固執するようになったが、「以前のようなボランティア体制で行うことは考えられないのか」と問うと、「窓口業務を100万円(時給500円)で受けて予算を浮かし、100万円を講座に回す」として講座運営の財源を得るために市から事業を受けることを明確にした。(自分ではない)第三者の誰かをボランティアで使用し、お金を浮かす。これはその後のベイタウンニュースでの広報でも明確に示されている「呼びかけ人」の基本方針である。一体誰がそんな搾取に応じるというのか。サークルからは当然拒絶され参加者がいなくなった。
 なお、協議会から参加し『呼びかけ人』に同調していた人物に「最低賃金やそれ以下のボランティアで責任を持ってきちんと勤務してくれる人を必要なだけ集められると考えているのか?」と問うと「そんなことは募集してみなければ分からない」などと平気で答えていた。この時点では既にH28年度からの公民館への参画を決めていたのにである。無責任という以外の何と言うべきか。
 なお、当時の「呼びかけ人」の弁では、市民大学を主催し、外部から大人物を呼び講演を行うとしていた。どうもその公式なプロモーターになりたかったらしい。

 結局大前提であった予算獲得ができなくなったのであるから、年間15〜20の講座を開催するとしていた講座運営が大幅縮小し、わずか一つになったのも道理である。しかも緑が丘公民館と違い、他人に丸投げである。もともとすべて誰かにボランティアで講師を依頼して講座を運営しようと言うことであったのだから、予算がなくてもそれなりの数はできるはずである。しかしやろうとしないのは、まさに予算がつかなかったからに他ならないだろう。

 緑が丘公民館では、是非ボランティアでいいから講座を主催したいという人物がおり、公民館の運営という話になったために脱落していた。市が提案を取り下げ勤務自体がなくなったため、講座企画運営で復活してきた。その結果4講座が実施されている
 打瀬では講座運営のボランティアを申し出る人がいたわけではない。自分たちで講座運営をすると言いながら、第三者の誰かに無償でやらせ講師料を巻き上げることしか想定していなかった。打瀬での公民館運営の希望は、目的がそもそも違ったのである。

 ミニコミ誌を使って嘘偽りだらけの広報をし、現実的な意見と様々な試算や資料を示したものを「自分たちの邪魔をするな」と密室でつるし上げて排除までした「考える会」とはいったい何だったのだろうか。



 ベイタウン・コア立ち上げ時には多くの人が理想を胸に関わったが、15年以上が経過し、当時とは全く違うものに変質してしまった。みなでいい施設を作ろうという地域のエネルギーは消え去り、自分の利益のために他人を当然のように利用しようとする人物がコアを支配しようと試みるようになってしまったのである。
 当初立ち上げに関わった人々のほとんどは現在コアに関わっていない。無償で施設管理などに尽力してきた人材も、「考える会」をきっかけに事実上排除されてしまった。

 開館当初にあった開かれた公共施設である幕張ベイタウン・コアはいまやどこにもなくなってしまった。現状の実態はサークルユーザーという住民のごく一部の人たちだけが優先利用する閉ざされた普通の公民館にすぎない。開館当初の多様な活動は今や見る陰もない。
 表では嘘で他人を信用させ、裏では力関係によって利用者を従わせたり都合の悪いものを吊し上げて排除する奇妙な地域施設になってしまった。設立当初から中心的に関わり開かれた公共施設を目指してきた筆者としては残念でならない。

 ただ、『考える会』の建前を素直にとらえて、維持管理に協力しようという人がいることは救いと言えるのかも知れない。しかし、『考える会呼びかけ人』は、その維持管理資金としても使われていた文化振興基金を私物化し崩壊させた経緯があり、その人物が関わる限り『考える会』やその後継組織に資金を譲渡することは考えがたい。
 建前を素直にとらえる彼らには資金を稼ぐ手段もなく、すぐ安易にサークルでお金を出し合うという意見が出てくる(先日は、10数万円の壊れた機材を各サークルにお金を出させて購入すると安易に発言していた人がいて大変驚いた)。しかし、自分たちが使うわけでもない機材が壊れるごとに大きなお金を拠出することをもとめられたら各サークルはたまらないだろう。こんな風にすぐ何かを強制する発想をごく自然にするようではどうしようもないのだ。発案者がお金を出すなら構わないのだが。

 私はかつて何度もそう言うことではないと訴えてきたが、搾取を当然とする「考える会呼びかけ人」らは耳を貸そうともしなかった。私は「皆がハッピーな形で維持管理のお金も稼げる形にしなければならない、誰かに強制的に無償労働させるようなことはあってはならない」と言ってきたが、『考える会』では全く聞き入れられなかった。彼らは千葉市から降ってくるお金を当てにすることしか考えていなかった。
 しかし、過去、コンサート運営では確かに誰もがハッピーな形、すなわち自ら呼びたい演奏家を呼び、スタッフとして自主的に参加し、演奏家の身近にいられる時間を楽しみ、お客さんらも演奏を楽しみ、黒字決算となったというどこにもマイナスのない運営ができていた。条件さえ整えばできることなのだ。

 そうでなくても、過去のベイタウンでは、やりたい人が手を上げ、同調する人とともに自分たちの力でやりたいことをする文化が育った時期があった。コアの設立はまさにその形でいろいろな人材が登場したことで成立したのだ。

 それがまさか、他人を強制的に無償労働させて搾取することを当然とするものが大手を振るようになるとは思いもしなかった。
 【考える会】は現在完全に支持を失い事実上活動停止しているが、今度は公民館サークルが否応なく参加せざるを得ない【サークル連絡協議会】を立ち上げ(何故か関係がないはずの協議会メンバーが数多く発起人に名を連ねている)、「ここでは【考える会】のようなことはしない」としながら【考える会】で手をつけていた活動の一部を継続し、サークルが参加させられる形になっている。サークルにとっては半強制性のある組織であるため当然警戒感がある。また以前のような事が起こらないとも限らず、注意を要する組織になっている。