FAZIOLI試弾のまとめ

2002/4/9
ピアノ選定委員会事務局長


 


● 試弾の概要と目的
 購入の最有力となっているイタリア製フルコンサートグランドFAZIOLI F278の試弾が3/26〜4/2まで5日間・計21時間に渡って行われた。試弾はベイタウン在住者、ベイタウンのピアノ教室生徒および選定委員会の認めた演奏家・調律師らによって行われた。
 今回試弾対象となったFAZIOLI F278は世界トップクラスのフルコンサートグランドながら、予算面できわめて厳しい幕張ベイタウン・コアでの導入に最も近い新古品ピアノとして発掘された。
 2回のコンサートでの使用および1回のレコーディングで使用された個体である。
 試弾では日本での実績が少ないメーカー故その音と演奏性など楽器としてのキャラクター・特性の確認、また個体差の問題や新古品で自体の問題の発見を目的としている。

● FAZIOLIの状態
 デモ用に正規総代理 株式会社中道インコーポレイテッドが所有する個体で、7年ほど前に製作され、日本に輸入されたとのこと。
 1998年レコーディングで、1999年イタリア人演奏家チッコリーニのコンサートで使用された後、2000年にイタリアで再調整を受け、消耗部品の交換および弦交換等を受けている。2001年3月に名古屋で再度チッコリーニのコンサートで使われた。
 その後ピアノ工房 株式会社牧野にて保管されていた。
 今回のコア開館イベント期間レンタルおよび試弾のために浜松から輸送され3/19に到着した。
 ホール調律も行う地元調律師に確認してもらったところ、ハンマー自体が柔らかめで弾き込み重視のピアノであるとのこと。また、弾き込み不足でハンマーに弦の溝がほとんど付いておらず、まだ本領を発揮する状態ではないことが確認されている。
 新しい状態では力を十分に発揮せず、弾き込みによって本来の力が発揮されるのは大量生産品ではないピアノに特有といえる。すでにFAZIOLIが導入されている栗東市芸術文化会館「さきら」においてもこの特有の経過をたどったことから、本個体も同じ経過をたどるものと思われる。現状でもその実力の高さを感じることができるはずである。

● 試弾感想の概要
 総回答者数74であった。(→全回答)
1.音質について
 調律師やピアニスト、ピアノ講師、一般試弾者(子供含む)らに共通する感想は「音が美しい」とのこと。おおむね好評で音質について問題を指摘するものはほとんどみられなかった。高音の音の堅さを指摘する声は一部にあった。

2.演奏性について
 弱音が美しい・出しやすいという感想がみられた。一方で中低音でff(フォルティッシモ)が出しにくい、または高音が出しにくいという声もあった。これらは弾き込み不足に起因すると調律師に指摘されており、多くのピアノ講師らにも「ピアノの若さ(弾き込み不足)」が指摘されている。

3.その他
 鍵盤が軽い、ペダルが軽いという感想が目立つ。これは、搬入当初プロ演奏家向けのきわめて重い状態から一般用に軽めに調整したことが原因している。ペダルについても一般に海外製ピアノは国産に比べ重いため軽くするようピアノ講師からリクエストがあり、軽めに調整しすぎた結果である。

● まとめ
・ 試弾の感想はおおむね好評であった。
・ ピアノの若さ、弾き込み不足に起因すると思われる反応の鈍さ・鳴りの不十分さなどが指摘されている。今後の弾き込みと調整で本来の音が出てくるものと思われる。
・ 内部の程度もよく、重大な個体の問題は発見されていない。

● 試弾期間を終えて
 試弾は子供が主体となったが、よいピアノへのあこがれを感じた。FAZIOLIは子供たちが晴れの舞台で弾くことを目標とするに充分なステータスを持ったピアノといえる。街のコンサートホールに常置されるピアノとしてきわめて適当と言える。
 今回の試弾以外に、ダートマス大学チャンバーシンガーズ、仲道郁代ミニコンサート、先輩公民館サークルによる祝賀イベント、ベイタウン・ミュージック・フェスタ等でも使用された。ダートマス大学では演奏者と指揮者に「すばらしいピアノ」との感想を得た。仲道郁代にも大変好評であった。また、仲道郁代からは購入・常設への期待も頂いた。

 弾き込み不足があり、弾き込みによる今後の変化があるため、現状の感想が全てを言い尽くしてはいないが、世界トップクラスのピアノとしての力量を感じることができ、幕張ベイタウン・コアにふさわしいピアノであることが確認できたものと思われる。

 末筆ながら、試弾運営にご協力いただいたピアノ講師の方々らに感謝申し上げたい。